230921 ジェイ・ウォルター・トンプソン・ジャパン事件

  (東京地裁平23.9.21判決 労働判例1038-39)

1.整理解雇とその他の普通解雇とでは、相当程度性質が異なり、その判断要素ないし判断基準も異なる以上、基本的には本件解雇の有効性を立証すべき責任を有する被告Y社の主張の力点の置き方を尊重することとし、まずは一般的な普通解雇の成否を検討することとし、整理解雇については予備的な主張と位置づけるのが適切であるとされた例

2.整理解雇の判断に及んだ場合の判断枠組みとしては、いわゆる要素説の観点から検討するのが相当であり、Y社が指摘する事項の特殊性については、この判断枠組み自体を否定するほどの事情とはなりえず、あくまで諸要素の検討において考慮する余地があるにとどまるとされた例

3.本件解雇が、企業の収益性を回復すべく、組織再編等に伴う企業の合理的運営上の必要性から実施された人員削減策であるということはできるが、それを超えて、Y社の経営状況が客観的に高度の経営危機下にあることは認めるには足りないこと、Y社が倒産の危機に瀕していることを認めるには足りないこと、解雇回避措置の相当性については、人員削減の必要性につき、企業の合理的運営上の必要性という程度にとどまるものと認定せざるを得ない以上、相当高度な解雇回避措置が実施されていなければならないというべきところ、本件で実施されたされたと評価できる解雇回避措置は、希望退職者を募集したことに加えて、せいぜい不利益緩和措置としての退職条件の提示を行った程度であって、甚だ不十分といわざるを得ないこと、手続相当性についても十分ではなく、本件解雇に至るまでの紛争の経緯については、本来、前件判決後に原告Xを実際にY社で勤務させるなどして、XY社間の関係を一旦は現状に戻すという手続きを踏むことが求められていたというべきであり、広い意味においては、これも本件解雇に至る手続的相当性を揺るがす大きな事情と評価するのが相当であることから、本件解雇は、整理解雇としても有効ではないとされた例

4.Y社は、前件訴訟により、Xに関する雇用契約上の地位確認等につきほぼ全部敗訴の判決が確定したにもかかわらず、その後も約2年間にわたってXの出勤を許さず、再び退職勧奨をし、無効というべき本件解雇に及んだものであり、これらの行為は不法行為を構成するというべきであり、Xは、専業主婦の妻と幼い双子の児童(うち1人には障がいがある。)を抱えており、Xは、こうしたY社の行為によって著しい精神的苦痛を被ったことから、30万円の慰謝料の支払いが命じられた例