230909 十象舎事件

  (東京地裁平23.9.9判決・労働判例1038‐53)

1.被告Y社が従業員の出退勤管理を全く行っていない状況において、原告Xが対抗措置としてソフト(Light Way)に保存・記録していた時刻が、割増賃金請求にかかる期間内のXの出退勤時刻に当たると認定された例

2.「労基法上の労働時間」とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいうものと解されるところ(最高裁判所平成7年(オ)2029号同12年3月9日第一小法廷判決・民集54巻3号801頁)、その判断は、①当該業務の提供行為の有無、②労働契約上の義務付けの有無、③義務付けに伴う場所的・時間的拘束性(労務の提供が一定の場所で行うことが余儀なくされ、かつ時間を自由に利用できない状態)の有無・程度を総合考慮したうえ、社会通念に照らし、客観的にみて、当該労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かという観点から行われるべきであるとされた例

3.割増賃金請求にかかる時間外労働時間のうち、深夜の一部を除き労基法上の労働時間に当たるとされた例

4.賃金の支払の確保等に関する法律6条、同法施行規則6条4号にいう「合理的な理由」には、裁判所または労働委員会において、事業主が、確実かつ合理的な根拠資料が存する場合だけでなく、必ずしも合理的な理由がないとはいえない理由に基づき賃金の全部または一部の存否を争っている場合も含まれているものと解するのが相当であるとあるとされた例

5.ソフト(Light Way)による保存記録等の客観性に全く問題がないわけではないことからすると、Y社の主張は、「必ずしも合理的な理由がないといえない理由に基づく主張である」と解することができるとされた例

6.割増賃金の未払いについて、30万円の付加金の支払いが命じられた例