230929 エヌ・ティ・ティ・コムチェオ事件

 (大阪地裁平23.9.29判決・労働判例1038-27)

1.原告Xが被告Y社に勤務する以前に勤務していた3社はいずれもNTTグループの会社で、Y社とそれ以前の3社でのXの勤務状況もその場所がコミュニケーションズ大阪第1営業部と同一の場所で、業務内容も基本的には同一・恒常的な業務であったが、Xは、Y社に入社する際、Y社によって定められた手続きによって応募し、2回にわたる採用面接を経たうえでY社との間で労働契約を締結し、しかも、同契約に当たっては、新たに労働契約書を取り交わし、その後、入社式に出席し、研修等を受講していることから、XとY社との労働契約は、Y社以前の労働契約の延長ということはできず、かえって、Y社との間で新たな労働契約が締結されたことが推認されるとされた例

2.Xが従事していた業務内容は恒常的な業務であり、Y社自身もX採用時、Xの業務経験を踏まえて採用していること、X自身も同労働契約が更新されるとの認識を持っていたこと、同更新時取り交わした契約書のうち、X保持分については作成日時も抜け、Xの記名押印もなく厳格になされたことがうかがえないことから、Xは、本件雇止め当時、同労働契約が更新されるとの合理的期待を有していたことが推認され、Xとの間で1回労働契約を更新した後の本件雇止めには、解雇権濫用法理が適用されるとするのが相当であるとされた例

3.Xの勤務状況等から、Xに対して一定の責任を問う余地は十分あるが、本件雇止めが正当化されるまでの事由があるか、疑問といわざるを得ず、その他、同雇止めを正当化させるに足る事由があると認めるに足る証拠はないから、本件雇止めは、濫用があり無効といわざるを得ないとされた例

4.未払賃金額の算定につき、本件雇止めが無効とすると、原則として、期間を含めて同雇止め時までの労働条件で更新されたと解するのが相当であるが、Xは労働契約の更新が認められて勤務を継続したとしても、更新時の新たな契約によって改正されたインセンティブ給制度の適用を受けるため、同更新後受給できるインセンティブ給は同改正後のインセンティブ給制度の範囲内であるとして、雇止め前の賃金額を基礎として、インセンティブ給を3分の1として算出した額の1か月当たりの平均額を、雇止め後の賃金月額とすることが相当であるとされた例