九条をめぐる情勢の展開と九条の会運動の意義(福島県九条の会「活動交流会」)

福島県九条の会「活動交流会」(2023年7月23日・二本松福祉センター)

      九条をめぐる情勢の展開と九条の会運動の意義

                         共同代表  今 野 順 夫

 

 福島県内各地・各職場等での九条の会で、ご活躍の皆さん、ご多忙の中、特に震災で日程が遅れた福島県内の地方選挙の真っただ中でお忙しい中、本日は福島県内の各九条の会の活動の交流のためにお集まりいただき、ありがとうございます。

 

(1)九条の会の発足と展開

 福島県九条の会は、2004年6月「全国九条の会アピール」に呼応して、福島県内各地の著名人25人の皆さんの呼びかけで、2005年2月4日に発足しました。

 発足以来、全県総結集の大規模な「講演会」を開催し、「憲法塾」の開催、各地学習会の支援、「日本の青い空」等の映画上映運動、ブックレットの出版等の広報活動を展開してきました。

 しかし、新型コロナ感染拡大の中、リアルに集会を持つことが困難になり、活動の継続拡大も困難になりました。例年、開催されていた東北六県の交流集会も、オンラインで継続することになりました。また、発足以来、共同代表として先頭に立ってこられた吉原先生が、昨年1月にお亡くなりになりました。改めて、吉原先生に対する感謝とご冥福を、心からお祈りします。また、先生のご遺志を受け継いで、福島県内で、九条の会運動を、大きく発展させていきたいと思っています。

 

(2)九条をめぐる情勢

 私たちの九条を守る運動は、様々な困難に直面していますが、日本の政治情勢、ロシアのウクライナ侵攻を契機とする世界の情勢の激変は、九条を守り、平和を追求する私たちの運動の再構築、強化を求めています。

 安倍政権、菅政権を引き継いだ岸田政権は、「敵基地攻撃能力の保有」(基地のみならず、中枢を含む「反撃能力」)、「大軍拡」を推し進めており、日本国憲法も、「専守防衛」もかなぐりすてようとしています。これは、バイデン米大統領から3回にわたって、岸田首相に求めてきたものであることが明らかになっており、日本を米国の対中国軍事戦略の最前線基地にしようとするものです。

 5月に行われたG7(主要7か国)広島サミットは、被爆地からの核兵器廃絶への積極的メッセージの発信が期待されましたが、「G7広島サミット」は、「核抑止力」論を公然と唱える一方、92ヵ国が署名した「核兵器禁止条約」を無視する態度を取りました。

 9条の改憲自体も米国の要求から始まっています。集団的自衛権行使の容認、敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有という憲法9条を蹂躙する暴挙がなされていますが、しかし、それでも9条は平和を守る力を発揮しています。政府は、9条のもとでは、全面的な自衛権の行使も、海外派兵もできないと、現時点でも言わざるを得ません。これらの制約を取り払ってしまうのが9条の改憲です。絶対に許すわけにいきません。

 

(3)福島と憲法

 私たちは、福島県内で憲法9条を守る運動を展開していますが、福島県憲法と歴史的に縁が深い土地であることを想起すべきと思います。

福島大学の若手の教員が中心になっている「福島と憲法」研究会を組織しており、その資料によれば、次のような例を挙げています。

自由民権運動に関わる福島事件(1882年に着任した三島通庸の県道工事の強制に抵抗する運動です。高知市立自由民権記念館/1億円ふるさと創生事業。「東の三春、西の土佐」)、

②戦争国策によるウラン採鉱強制(石川町の町立歴史民俗資料館には、微量のウランを含むベグマタイトが展示しているが、これは、1945年4月頃から、陸軍とその要請を受けた理化学研究所が、石川中学3年生を動員して採掘を急いだ跡がある。日本もドイツや米国などとの原爆開発競争に乗り出していた。)

③戦後最大の冤罪事件と言われる松川事件(1949.8.17)などの歴史的事件の現場である(1963.9.12 全員無罪判決/9.30-10.1無罪確定60周年記念集会<福大>)=14年間の無実の投獄がありましたが、全国の労働者・市民の闘いによって無罪を勝ち取ったものです。

日露戦争時に日本最初の良心的兵役拒否者となった矢部喜好(きよし)氏(会津出身のキリスト教会の牧師)

⑤太平洋戦争後に憲法研究会の主要メンバーとして民間憲法草案を起草したGHQ草案に影響を与えた鈴木安蔵小高町出身)氏(鈴木安蔵を讃える会)、

日本国憲法審議過程で「平和」や「生存権」などの導入に大きな役割を果たした鈴木義男氏(白河市西白河郡白河町出身)<仁昌寺正一「平和憲法をつくった男 鈴木義男」・筑摩書房)>など、重要人物の出身地です。

その他、結婚退職制を憲法に反する制度として断罪した住友セメント事件は、発端は、いわき市の鈴木節子さんの裁判でした。これも、憲法を生かした運動として銘記されるべきです。

これらは、福島県憲法と歴史的に縁が深い土地であることを示していると思います。福島県の「九条の会」運動は、そうした基盤を持って進んでいると思います。

 

(4)九条の会運動の展開(試案を含む)

 県内には、約100の「九条の会」がありますが、積極的に展開しているところもあれば、休業状態の会もある。一つ一つの九条の会が、大きく活動を展開し、憲法改悪反対を阻止し、憲法の理念を実現する役割を果たすことが必要と思います。そのためには、九条の会自体の発展が求められていると思います。

 県九条の会の事務局会議で、明確な確定した方針ではないが、事務局会議に提案し、議論されていることを含めて話したい。

 

 ①「福島県九条の会」の位置づけ:各個別九条の会の上部団体ではなく、連携支援関係

*また全県的視野における九条の意義の普及(ブックレット、講演会、憲法カフェ等)

 

県の九条の会と個別の九条の会は、組織的に上下関係にはなく、相互に連携支援の関係にあるということです。他県では、九条の会連絡会として存在しているとこもあります。

しかし、全県的視野で行われるべきことは、県九条の会として、積極的な展開をする役割があると思います。憲法に関する講演会、いままでもやってきて11号まで出版していますが、ブックレットの出版、さらに、例えば、オンラインでもっと気軽に参加できる「憲法カフェ」のようなことも有意義と思います。

各地域の個別九条の会からも、全県で、取り組む課題などの積極的な提案をお願いしたい。

 

 ②全県隈なく、九条の会結成の支援、県内個別九条の会の連携・支援(憲法講座)・交流

   自治体単位、複数自治体、自治体内地域、

青年層、女性層への普及 (大学OB九条の会の例)

  ホームページ(イベントの紹介)http://www5a.biglobe.ne.jp/~tkonno/f-9jyou.html

 

 全県隈なく、全自治体に九条の会を設置しようと思いますが、各地域の実情の違いから画一的にはできないと思います。

 一つは、憲法講座の講師リストを作りましたが、是非、利用していただきたいと思います。

 個別自治体単位が難しいところは、隣接の自治体が共同で設置することも必要と思います。また、福島市郡山市いわき市などでは、自治体内にいくつかの地域九条の会をつくり、必要に応じて連携していくことも重要と思います。

 各個別九条の会の取り組みを、ささやかなホームページですがまとめていますので、ご利用ください。

 また、九条の会運動の担い手が、まだ青年層や女子層に広がっていないことが、運動を、大きくしていく際にネックになっているのではないかと思います。

 青年・学生の中での運動は、困難があるかもしれませんが、最近、「○〇大学OB九条の会」が結成され、ネットワークもできつつあります。同窓生や退職者の九条の会を通じて、青年層に広げられないかと思っています。

 

 ③個別九条の会の組織強化、会員の拡大(ニュースを継続的に読むレベルから)

発足時の幅の広さ(顧問)、ニュース発行(情勢、リレートーク)、財政・会費

 

 単位九条の会の数は、分かりますが、全体として九条の会に入っている人は何人なのかはっきりしません。はらまち九条の会は、400人と聞いていますが、それぞれの会の会員数は分かりません。

 この点、県九条の会も、事務局員13人で月に1回会議をやっています。企画集団であることは意味があると思いますが、会員の拡大も必要かなと思います。全国の交流会では、ニュースを継続的に読む人を「会員」として、一挙に、数百名の会にしたとの報告もありました。また署名してくれた人を会員として、連絡を取っている。

 このためには、ニュースの発行、内容の充実が重要と思います。多くのニュースは、企画案内が多いですが、会員の発言(リレートーク)などが、かなり関心を持って読まれているし、相互の連会も生み出しているのではないかと思います。

 「はらまち九条の会」のニュースは、地元と避難者を結ぶ大きな役割を果たしているし、その会費(年間1000円)が、会の財政を支えていることは貴重な経験です。

 また県九条の会としても、設立当初の呼びかけ人25人は、非常に多彩な方々です。情勢の厳しさの反映かもしれませんが、最近は、例えば、保守系でも九条を守るという方々が、なかなか一緒に行動をとるようにはなっていないような気もします。思い切って、保守層も含めて、九条を守ること一点で、結束することが、情勢が厳しくなればなるほど、必要ではないかと思います。改めて、顧問のような形でも結集する必要があると思います。

 

 ④署名活動の展開(「九条改悪反対」、ノーベル賞推薦運動)

 

 従来からの署名運動の展開、かなり厳しい状況ですが、工夫して広げていく必要があると思います。また、ノーベル賞推薦運動として、賛同署名が呼びかけられています。

 ぜひ、成功させていいきたいと思います。

 

(5)全国の経験から学び、持続的な運動展開を

        九条の会運動の経験の交流も、今後、特に重要と思います。

     2023.5.28九条の会全国交流集会(対面)、

2023.9.9東北ブロック九条の会交流会(青森市)<対面+オンライン>

状況が異なるので、それぞれ特色を生かした運動が必要ですが、本日の会合も、その趣旨です。ここで報告された経験から学んで、また全国や東北の取り組みから学んで、行く必要があろうと思います。

 

ここにお集まりの九条の会の皆さんが、独自に、また連携して運動を強化する契機になれば幸いです。

以上、本日の会合に対する期待を述べさせていただきました。皆様からの積極的な報告を期待しています。