九条の会ブックレット
『新たな改憲の危機と九条の会運動の意義』(九条の会 2022.9.27)
はじめに
1)出発点は安倍政権、安倍政権による9条破壊の新段階
・政府は、自衛隊が9条の禁止する軍隊でないと強弁するため、自衛隊の活動にさまざまな制約を設けざるを得なくなった。
・“自衛隊は憲法9条が禁止している軍隊ではない、侵略された時抵抗する「自衛のための必要最小限度の実力」だ”
~制約を認めざるを得なかった。
〇海外派兵をしない、〇「集団的自衛権の行使」は禁止する =「専守防衛」
1990年代の冷戦終焉以降:
自衛隊:アフガン侵攻後インド洋海域へ
・安倍首相は、その制約の打破をねらう。
〇安倍政権:2014年に政府解釈の改変(米軍の侵攻と戦闘=「日本の存立をおびやかす」と判断)~米軍に武力で加担できる ⇒2015安保法制
9条との乖離が激しくなる ~2017年安倍改憲提言(2018改憲4項目)
⇔「市民と野党の共闘」⇒「安倍9条改憲NO!全国市民アクション」結成
自公は、衆参両院で3分の2を獲得していたが、改憲審議を進められず
2019年参院選 32の1人区 野党統一候補10選挙区で勝利
コロナ失政⇒退陣
2)菅政権下での日米軍事同盟の新段階
■トランプ政権下でのアメリカの世界戦略の大転換
冷戦終焉後のアメリカの世界戦略・・「自由な市場」の維持・拡大
「ならず者国家」「テロリスト」との戦争(イラク、ソマリア、アフガニスタン)
⇒「自由な市場」で急速な発展、派遣確立を窺う中国の登場(イラン、ロシア)
アメリカ:「自由市場の維持・拡大のための警察官戦略」
⇒「対中国覇権主義競争、軍事対決戦略」へ大転換
⇒日米軍事同盟に大きなインパクト・・・日米軍事同盟と日本の役割が重要化
■バイデン・菅政権下で日米軍事同盟の新段階へ
対中軍事対決戦略を、NATO、日本を含めた対中国軍事同盟網の構築で実現
2021年4月16日、バイデン・菅会談 ⇒日米共同声明
①日米軍事同盟の対象を「インド太平洋」と規定。
②中国の脅威の列記(「反対」「懸念」)
③新台湾条項 米軍の台湾介入 ・・・日本の加担(武力行使)
④共同作戦体制強化とともに、日本が「自らの防衛力の強化」約束
南西諸島へのミサイル部隊配備の加速、米軍艦船等への護衛
日米、日英、日豪、日印・・・軍事的提携関係、
重要土地調査規制法
■対米約束に基づく「敵基地攻撃能力」保有
2020年通常国会会期末(安倍元首相)
アメリカの思惑:日米軍事同盟の強化、日本に攻撃的兵器を持たせる
*ミサイルが確実に飛んでくることが分かっており、それを防ぐのに他の手段がない場合には相手基地を「叩いても」9条に違反しない(答弁)
⇒アメリカの要請に応じて集団的自衛権行使を行う攻撃的兵器は持てない
安倍首相の解釈変更の提案
(対中国軍事対決の一翼:集団的自衛権の行使のための攻撃能力の保有)
3)岸田政権は、2021年衆院選で政権を維持し、改憲・9条破壊の加速化へ
難関:「市民と野党の共闘」の挑戦に対して、政権維持
21年10月31日衆院選 自民党は現有議席23減らす(261議席)
自公政権維持、しかし自公だけでは3分の2取れず。
■改憲・9条破壊加速化の要因
①改憲に有利な政党配置の現出
維新の会、国民民主党(野党共闘の離脱)・・・憲法審査会の与党幹事懇談会
②バイデン政権の圧力の増大(22年1月7日、日米安全保障協議委員会2+2)
共同発表:*共同声明=中国の脅威に「懸念」⇒共同で「抑止」「対処」
*日本の防衛力の「抜本的強化」=「敵基地攻撃能力」の保有
*日米同盟の役割分担の見直しへ言及(盾と矛)
5月のバイデン・岸田の首脳会談で約束
■ウクライナ侵略という、加速化を促すまたとない事件
2月26日 林・ブリンケン会談 「力による現状変更は欧州に止まらない」
安倍元首相:核を持たないからウクライナは攻められた。米軍の核を日本へ
(櫻井よしこ)軍事力拡大:防衛力をGDP比2%以上に(敵基地攻撃能力)
■ウクライナ危機を前面に「反撃能力」保有、GDP比2%の大軍拡10人の
自民党安全保障調査会(4月26日)
「新たな国家安全保障戦略等の策定に向けた提言」
*「反撃能力」と名前を変えて「敵基地攻撃能力保有」
「専守防衛」に沿っているか?
(小野寺)敵に攻撃される前に攻撃(「着手」が問題)=解釈変更
「基地」を削除・・敵の中枢機関、相手国の指揮統制機能(北京)
1%枠(1976年三木内閣、中曽根廃止)を突破、(5年以内に)
「専守防衛」の考え方の下で=大きく覆す(「矛」の一部分担)
2016年、19年 野党共闘の成立:32の1人区全てで野党統一候補
16年=11人、19年=10人の当選(自公維3分の2以下)
岸田自民党のねらい
①ウクライナ危機を前面、国民の不安
③共闘への分断攻撃の拡大(1人区で勝利)
■かつてない選挙戦
景気、経済政策を前面 ⇒ 重点政策:安保外交
2.参院選はどうしてあのような結果となったのか?
1)参院選の結果
改憲問題との関係
1人区で大幅拡大、複数区で増加(55⇒63)、改憲4党177議席
②立憲野党 れいわ2⇒3、社民1、立憲民主23⇒17、日本共産党6⇒4
発議阻止の3分の1を確保できず。
③立憲民主党 改選議席を6議席下回り、21衆院選比で比例得票率・数を大幅減
④共産党 6⇒4 21衆院選比:比例得票率・得票数ともに減少
得票率6%台、得票数300万票台<10年ぶりの低さ>
2)参院選はどうしてこのような結果に終わったのかーー3つの要因
①悪政にもかかわらず自民党得票率が微減にとどまり、高得票率が維持された
■安倍政権以降の財政出動政策が、コロナ禍でも「仕方のない」支持を継続
1人区) 16年参院21勝11敗、19年参院22勝10敗、今回28勝4敗
直接の原因>共闘の不調、自民:高得票率維持、自公5割以上
自民:悪政続けながら得票率を動かしていない(34.43%)
復興支援「福島・宮城・岩手」:自民党支持の回復
「仕方のない支持」の維持
■安倍元首相銃撃事件で、最終盤、自民党の得票上昇
日経紙:自民党 7週間前40%、1週間前35%、しかし7月9日39%
内閣支持率 50%⇒45%⇒50% (襲撃事件が得票率減を最小化)
②野党共闘見直しが自公政治に代わる選択肢を求めていた有権者の不信を招いた
■野党共闘が不調の結果、自公政権に代わる選択肢が示されなかった
衆院選後、共闘攻撃、立憲野党の議席が伸びず、共闘が立憲民主の大敗と
国民民主党が共闘から離脱 立憲民主指導部の交代・共闘路線の見直し
共闘:32⇒11のみ一本化
■共闘消極の結果、自公政治に不満な市民の立憲民主党離れ
立憲民主党の得票減(理由)*共闘路線の見直し、共闘消極姿勢への転換
*ウクライナ侵略⇒9条にもとづく平和の主張を後退
=リベラル層の立憲離れ
■共産党、後退の原因は、共闘の中での共産党への役割期待が薄れた
防衛力キャンペーン・・・「日本も侵略されるかも」雰囲気を覆せず
■共同通信の世論調査では立憲4党支持者の6割以上が野党一本化望む
全体47.2%、立憲支持層65,4%、共産支持層60.0%、社民支持層65.8%
③ウクライナ危機に乗じて安保・防衛力強化キャンペーンで自民党が得票を上昇
■ロシアのウクライナ侵略に乗じた自民、維新の安保・防衛力強化論に一致し
て立ち向かえなかった。
「外交・安保」を重視した有権者の投票先(自民50%、維新16%、参政5%)
■立憲野党は、足並み揃わず
一致して対決する構造つくれず。(物価政策の失敗に照準)
立憲民主:憲法改悪反対、安保法制の違憲部分廃止・・重点政策でない
安保・外交・・与野党対決にならず
3.岸田政権の改憲・9条破壊策動にいかに立ち向かうか
■国民は改憲・9条破壊に同意していない、国民は迷っている
<改憲賛成が増えているが>
朝日(7/6)改憲賛成36%、反対38%
<9条改憲には反対が多い>
<なぜ、9条への自衛隊明記には賛成が多いのか?>現状維持
<防衛費の増額については迷っている>
<経験を急ぐことには反対が多い>
2)軍事力と軍事同盟ではアジアと日本の平和を実現できないことを改めて
■軍事同盟強化では日本とアジアの平和は実現できないーウクライナの教訓とは
軍事対軍事での対決は、平和をもたらさない。
■では、どうやって日本とアジアの平和を実現するのか?
――9条にもとづく平和の実現
<9条は無力か?>
<万一、中国が攻めてきたら9条なんて役にたたない?>
1972年「日中共同声明」 1978年「日中平和友好条約」
■9条の理念は実現できていない、9条の「武力によらない平和」を実現するには
■いま、市民に必要な行動は?
発議を許さない市民の大運動
①大軍拡、「反撃能力」・・攻撃的兵器保有、防衛費大幅増を許さない闘い
②自民改憲4項目の闘い
むすびに代えて