地元紙・福島民報紙「論説」(2013年3月7日付)/転載

<生協の食事測定>「食卓の安心につながる」

生活協同組合コープふくしまは平成二十三年度から食事の放射性物質測定に取り組んできた。東京電力福島第一発電所事故を受けて、これまでに県内の延べ三百世帯で実施した。大半は本県産の農産物を食べていたが、いずれも健康には問題ないレベルだった。

参加した世帯からは「あまり神経質にならずに食事の支度ができるようになった」との声が聞かれる。原発事故で大混乱する中、食べ物の測定にいち早く着目した意義は大きい。独自事業のため費用は掛かるが、継続してほしい。

内部被ばくへの不安を持つ組合員に食卓の実態を理解してもらおうと、コープふくしまは二十三年十一月から家庭の食事に含まれる放射性物質の測定に取り掛かった。組合員の世帯で二日間合わせて六食分の食事をそれぞれ一人分多く作ってもらい、日本生協連商品検査センターなどの協力で調べてきた。

これまで県北、県中を中心に一回当たり百世帯、三回で延べ三百世帯で測定を実施した。それによると、ほとんど検出限界値未満だった。一部で放射性セシウムが検出されたが、健康には問題はないことが分かった。

事故直後には、食事によって特に子どもへの内部被ばくを恐れる県民が多かった。コープふくしまの取り組みで不安を減らすことができたはずだ。測定の結果は、協力した組合員世帯ばかりでなく記者会見を通して一般県民へも知らせたからだ。

手間や費用の面から同じ世帯で長期間にわたって測定することはできない。測定日以外の日に放射性物質を多く含む食べ物を取っているのではないかーとの不安は残る。

この不安を解消するため、ホールボディーカウンターを利用した内部被ばく測定も始まった。これまでに食事調査に参加した四十五人の測定を終えたが、検出限界値以上の放射性セシウムが検出された人はいなかった。

コープふくしまは取り組みについて「人によって放射性物質に対する受け止め方が異なる。実態を理解し、理性的に判断してもらう」と説明する。食事とホールボディーカウンターの測定を組み合わせることによって、安心度も一段と高まる。一般県民にとっても、大きな判断材料となる。

食への不安を拭い去ることができない県民は多数いる。県も二十四年度から日常食に含まれる放射性物質のモニタリングを実施、結果はコープふくしまと同じような傾向だ。それぞれが食事の測定を続けて食卓の安心につなげていきたい。(佐藤晴雄)