4.27松川9条の会でのレジュメ

<2014.04.27 憲法9条をまもる松川町民の会>
    憲法と私たち〜今、何が起きているのか〜
はじめに
 *大震災・原発被災によって侵された基本的人権
   (いまこそ憲法から現実を見る)
 前文「・・・われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。・・」
 第13条「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」
 第25条1項「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」
 第97条「この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であって、これらの権利は、過去幾多の試練に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。」

1.なぜ憲法改正か 〜日本国憲法は「押しつけ憲法」⇒「自主憲法」へ
 ポツダム宣言(1945.7.26)の受諾(1945.8.14通知、8.15発表)
                    :明治憲法の否定
 (実質敗北)受諾の遅延の間に、8.6広島原爆、8.8ソ連の宣戦布告、
                8.9長崎原爆
 (原爆の惨禍、シベリヤ抑留、中国残留孤児問題の回避の可能性?)
 1945.9.30 マッカーサー厚木到着 
        連合国(事実上米単独)による占領開始
  幣原内閣(松本案1946.2.1) 神聖⇒「至尊」等
   (極東委員会2.26)
  1946.2.3 マッカーサー独自の憲法案 (マッカーサー・ノート)
<内容上、自主性はなかったか?⇒政府関係者にはない。民間レベル?>
<知識人グループによる憲法草案:憲法研究会(1945.11)案/鈴木安蔵
  ← 大日本帝国憲法制定前:自由民権運動家による「私擬憲法」研究
      <例:「五日市憲法草案」/あきる野市郷土館>
  ⇒2.13日本政府へ「マッカーサー草案」⇒3.6幣原内閣案・・・
   (制定過程)貴族院衆議院(女性の選挙権)⇒帝国議会での審議
   日本国憲法の制定・公布(1946.11.3)⇒施行(1947.5.3)
 *なぜ「押し付けられたのか」? 「誰が押しつけられたのか」?
 (空洞化の経緯)(冷戦)1950朝鮮戦争・・米軍出動⇒「警察予備隊」                           (政令
 ⇒サンフランシスコ条約(1951.9.8署名⇒1952.4.28施行)単独講和条約
  「主権」の承認(但し、沖縄問題)+日米安保条約(⇒自衛隊問題)

2.憲法改正の動き
  憲法改正の困難(3分の2発議要件)、
  解釈による憲法改正解釈改憲=空洞化)
   憲法を守り実現させるのか ⇔ 憲法を改正するのか
   二つの法体系論(長谷川正安):安保法体制と憲法体制の対立
    (安保条約を頂点する法体系、憲法を頂点とする法体系)
       ⇒憲法の条項の浸食は、安保法体制の求め・具体化

3.安保条約はなぜ締結されたのか
 連合国軍(事実上の米軍)⇒米軍単独駐留の根拠(既成事実の合法化)
  1951安保条約の締結(米軍の存続:基地貸与条約):日本が駐留を   「希望」
    ⇒(日本経済の復興)1960安保改定共同作戦可能(新安保)
 安保条約第5条「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、い
ずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするもの
であることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に
対処するよう行動することを宣言する。」(義務ではない)
  ⇒(10年間継続)1970(双方からの一方的破棄可能へ)
    (各自の戦力の維持発展義務/日本戦力の維持発展義務)
 第3条「締約国は、個別的に及び相互に協力して、継続的かつ効果的な自
助及び相互援助により、武力攻撃に抵抗するそれぞれの能力を憲法上の規定に従うこと条件として、維持し発展させる。」
  朝鮮戦争(1950.6.25)
     ⇒ 「警察予備隊」(政令1950.8.10/治安維持)
     ⇒ 「保安隊」(1952保安庁法/ポツダム政令失効)
     ⇒ 「自衛隊」(1954年自衛隊法)

4.二つの裁判
砂川事件:(米軍基地は憲法違反か?)(東京地裁違憲判決⇒飛躍上告最高裁
 東京地方裁判所(伊達秋雄)「日本政府がアメリカ軍の駐留を許容したのは、指揮権の有無、出動義務の有無に関わらず、日本国憲法第9条2項前段によって禁止される戦力の保持にあたり、違憲である。」(1959年3月30日)
 最高裁判所(田中耕太郎長官)「憲法第9条は日本が主権国として持つ固有の自衛権を否定しておらず、同条が禁止する戦力とは日本国が指揮・管理できる戦力のことであるから、外国の軍隊は戦力にあたらない。したがって、アメリカ軍の駐留は憲法及び前文の趣旨に反しない。他方で、日米安全保障条約のように高度な政治性をもつ条約については、一見してきわめて明白に違憲無効と認められない限り、その内容について違憲かどうかの法的判断を下すことはできない」(統治行為論採用)(1959年12月16日)と:原判決を破棄、差戻。
②長沼事件(自衛隊憲法違反か?)(札幌地裁違憲判決⇒高裁破棄)

5.明文改憲解釈改憲(条文と実態の乖離の解決)
 1)明文改憲・・・96条 3分の2で発議 ⇒ 国民投票過半数
         96条の3分の2条項の改正をまず行う。(過半数で発議)
     硬性憲法への批判/96条を改正することは3分の2⇒国民投票
             ⇒その後の憲法改正が容易に可能
 2)解釈改憲
  ☆憲法第9条第1項「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」
  第9条第2項「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」
  *放棄したのは「侵略戦争のみ」か、「自衛戦争を含むすべての戦争」か?
  *戦力不保持は、「侵略の戦力のみ」か、「すべての戦力」か?
    交戦権の否認・・・<すべての戦争の放棄>との学説が多い。
   (政府解釈)
  9条:自衛戦争は否定せず、自衛のための軍隊は違憲ではない。
        専守防衛の範囲では合憲
  しかし、個別的自衛権の範囲内で憲法違反とならず
      (イラク参戦拒否の根拠)
    集団的自衛権の行使は憲法違反(内閣法制局長官の答弁)

6.集団的自衛権
  国連憲章51条:安全保障理事会での制裁行使前の個別的自衛権及び集団的自衛権の行使は許される。(自衛権=個別的自衛権集団的自衛権
 ★「集団的自衛権」の容認⇒共同行動(米軍への攻撃=日本への攻撃)
          ⇒米軍と自衛隊の一体化、武器の共同開発
    ・・・自らの軍事情報が日本から漏れる懸念⇒防ぐ措置の要求
          「特定秘密保護法案」の成立へ
   <9条の形式改正と実質改正(解釈改憲)>
 ★改正草案
  第9条の2第1項「我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全を確保するため、内閣総理大臣を最高指揮官とする国防軍を保持する。」
  第9条の2第3項「国防軍は、第一項に規定する任務を遂行するための活動のほか、法律の定めるところにより、国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動及び公の秩序を維持し、又は国民の生命若しくは自由を守るための活動を行うことができる。」
  第9条の2第5項「国防軍に属する軍人その他の公務員がその職務の実施に伴う罪又は国防軍の機密に関する罪を犯した場合の裁判を行うため、法律の定めるところにより、国防軍に審判所を置く。この場合においては、被告人が裁判所へ上訴する権利は、保障されなければならない。」
  第9条の3「国は、主権と独立を守るため、国民と協力して、領土、領海及び領空を保全し、その資源を確保しなければならない。」
  解釈改憲と明文改憲/二つの相互関連
   (実質的改正によって、形式的改正の地盤を作る)

7.特定秘密保護法の問題
   *日米による共同作戦行動の秘密
   *行政機関による「特定秘密」の指定(秘密の範囲が不確定)
    ①防衛に関する事項(10項目:武器・弾薬・航空機等の仕様・種                  類・数量)
    ②外交に関する事項(5項目:対外交渉の内容等)
    ③特定有害活動の防止に関する事項(4項目:外国政府の情報等)
    ④テロリズムの防止に関する事項(4項目:テロ防止の措置・計画                       等)
   *軍事、外交、テロ、スパイ等広範囲な秘密保護
    → 原発事故の情報隠し・・・共謀・教唆・扇動による一般国民      の制裁
   *重罰化(アメリカ並み):特定秘密従事者(公務員・民間も)
        →共謀、教唆、扇動も5年以下の懲役 
   *言論の自由に対する重大侵害(実質改憲・・・21条改正論)
     改正案21条2項「前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を       害することを目的とした活動・・・認められない。」
   *何を秘密にするか不確定(厳罰主義、抵触の怖れから言論自由が                事実上制約)

8.憲法改正動向の全体状況
  「改正」の3つの方向 (樋口陽一『いま、「憲法改正」をどう考え              るか』参照)
  第1 現行憲法が運用されてきたすがたを憲法条文化しようとする。
     草案1条 天皇 象徴規定⇒+元首 超憲法的存在
                (憲法尊重99条⇔102条)
       戦争の放棄⇒安全保障「国防軍
  第2 憲法解釈上 「原則」に対して「例外」と位置づけ。
       ⇒「例外」を「原則」と並ぶ扱い格上げして条文化
       表現の自由(草案21条2項) 現憲法でも全て自由ではない                    (名誉毀損等)
       政教分離⇔「社会的儀礼又は習俗的行為」(20条3項)
       労働基本権⇔「全体の奉仕者」による規制の容認
       (15条−地位の根拠・制約の根拠ではない)⇒判例は慎重
  第3 原則そのものの否定 ⇒ 他の原則に取り換える。(草案の基                           本的考え方)
       前文の前文書き換え・・「人類普遍の原理」が消える
     ★「個人」ではなく「人」(13条)、
  自己決定の自由な主体としての「個人」と「個人」との間にとり結ば  れる社会関係ではなく、「家族や社会全体」の中に置かれた「人」⇒  「和」
     ★そして「社会の自然かつ基礎的な単位」(24条)
     ★「公共の福祉」⇒「公益及び公共の秩序」(12条、13条)
     ★憲法の尊重擁護義務を負うものは?(99条⇔102条)
        権力を縛る⇒国民が尊重義務
     ★緊急事態−「協力」から義務へ
     ★憲法改正手続きを容易にする

まとめ
  ★日本国憲法の三大原理の危機(憲法改正の限界)
    ①国民主権主義
    ②平和主義
    ③基本的人権の尊重
  ★憲法とは何か(立憲主義の意義):
      国民の自由と権利をため、国家権力の手を抑える
私たちの平和な生活、健康で文化的な生活(憲法保障)を維持発展への礎