医師の宿直

 最近、大阪高裁で、医師の宿直を時間外労働とみなして、支払い命令を出した判決があった。医療事故をなくすためにも、宿直という名目の長時間労働(8+16+8=32時間労働)を、早急に見直すべきと思う。私たち、患者の命を守るためにも。

 この下級審、奈良地裁の判決(平成21年4月22日・労働判例986号38頁)を見つけたので、その骨子を載せておく。

 ①労基法41条3号の「断続的労働」に該当する宿日直勤務とは、正規の勤務時間外または休日における勤務の一態様であり、本来業務を処理するためのものではなく、常態としてほとんど労働する必要がない勤務いうものと解され(平14.3.19基発0319007号)、同号にいう行政官庁たる労基署長は、常態としてほとんど労働する必要がない勤務のみであること、宿直勤務は週1回、日直勤務は月1回を限度とすることなどの許可基準を満たす場合に、医師等の宿日直を許可するものとされた例

 ②県立病院勤務の産婦人科医であるX1およびX2が従事した宿日直勤務、宅直勤務につき、X1らは宿日直勤務時間中に本来業務も行っており、その回数も少なくなく、救急医療を行うこともまれでなく、宿日直勤務時間中の約4分の1の時間は通常業務に従事していたなどの実態からすれば、X1らの宿日直勤務が常態としてほとんど労働する必要がない勤務であったということはできず、これを、医師らの当直勤務は断続的な勤務に当たると規定する被告のYの勤務時間規則7条1項3号(6)に該当するものとすることは、労基法41条3号の適用除外の範囲を超えるものであるとされた例

 ③X1らは、宿日直勤務の時間中は場所的拘束を受けるとともに、呼出しに速やかに応じて業務を遂行することを義務づけられており、実際の診療時間だけでなく、診療の合間の待機時間も含めて、医師として役務の提供が義務づけられているといえ、使用者の指揮命令下にあったとされた例

 ④宿日直医師の求めに応じて病院に来て、それに協力し診療に当たる宅直勤務について、医師らの間で自主的に行われていたもので、使用者が命じていたことを示す証拠はなく、待機場所が定められているわけでもないとして、その時間は病院の指揮命令下にあったとは認められないとされた例

 ⑤X1らは一般職の地方公務員であり、その給与および割増賃金額は条例で定められるものであるが、割増賃金の算定の基礎となる1時間当たりの賃金額の計算は、労基法の定める基準を下回ってはならないとし、調整手当、初任給調整手当、月額特殊勤務手当を算定の基礎に加えるのが相当とされた例

 ⑥X1らの時間外・休日・深夜労働の割増賃金の支払請求につき、時効消滅した分を除き、既払額を引いた金額が認容された例