会津における松川事件学習会へのメッセージ

2023年5月28日(会津美里町役場・じげんプラザ)

  <松川事件学習会へのメッセージ>

 戦後最大の冤罪事件といえる「松川事件」は、1963年9月12日の最高裁判決で被告全員の無罪を勝ち取りました。今年は、無罪確定から60周年になります。この60周年を記念して、9月30日から10月1日に、福島大学を会場に、全国集会を行います。この事業を成功させるために、実行委員会は、県内各地で松川事件の学習会をひらいています。

 松川事件は、1949年8月17日の、東北本線松川駅と金谷川駅間での列車転覆事件の犯人として、無実の国鉄東芝の労働者20名を逮捕し、福島地裁・仙台高裁では死刑を含む有罪の判決を下しました。しかし、広津和郎氏ら文化人や労働者・市民の広範な運動の力で、無罪を勝ち取ることができました。14年もの長い間、獄中に置かれた末の勝利です。その後も、多くの冤罪事件が起こりましたが、この松川の全面勝利の裁判闘争に学び、幾多の無罪判決を勝ち取ってきました。松川事件の教訓を受け継ぎ、冤罪を許さない運動が重要になっています。

 私個人としては、仙台での高校2年の時に、全国から支援の行進が仙台集まり、仙台高裁で全員無罪の判決が出たことを記憶しています。そのことは、理系から法学への進路変更にも大きく影響を与えており、最高裁判決は大学1年の時です。

 仙台高裁への差し戻し、仙台高裁の無罪判決は、東芝の団体交渉の経緯を書いている「諏訪メモ」が、決定的な証拠になっています。これは、現在、福島大学の松川資料室に大事に保管されており、この運動と資料は、国際的にも保存すべきものとして、ユネスコ世界遺産(世界の記憶)に登録すべきものとして、その準備活動を継続しています。

 また松川事件、松川運動の受け継いでいくために、優れた松川事件に関する論説や活動などを「松川賞」として発表しています。2015年の第1回松川賞には、研究評論部門で、会津の前田新さんの「戦後70年と松川事件―いま、それを語り継ぐことの意義」が、また2021 年の第7回松川賞には、エッセー部門で会津の吉田恒雄さんの「松川の教訓を胸に刻んで」、さらに2022年の第8回松川賞には、評論部門で会津の町田久次さんの「笑う裁判官」を選んでいます。私たちは、こうした優れた作品からも学んで、松川を継承していくべきものと思います。

 残念なことに、昨年までお元気に活動をなさっていた元被告の阿部市次さんが、お亡くなりになり、その受け継ぎも困難になってきましたが、それを受け継ぐ私たちは、過去の事件としてだけではなく、松川の教訓を新たに展開していくべきものとして、二度と松川事件のようなことは引き起こさせないということを肝に銘じていくべきものと考えています。そうしたことで、無罪確定60周年記念集会は、松川事件そのものを大切にしながらも、繰り返されている冤罪事件を許さない立場から、日弁連の鴨志田弁護士から「冤罪の歴史から再審法の改正へ」の記念講演、2日目のシンポジウム「冤罪と刑事司法」には、パネリストして、東住吉事件の青木恵子さん、袴田事件の映画監督の笠井千晶さん、布川事件の桜井昌司さんを交えて、行うことにしています。

 本日の学習会を契機に、会津でも松川の継承運動を広げていただきたいと思います。4月2日の川崎哲さんの講演会に、私も参加させてもらい、感動しました。ぜひ、浜通り中通り会津が団結した運動の高揚の中で、震災からの復興も実現していきたいと思います。

 さらに団結を強めて、平和と民主主義を実現していきましょう。

   2023年5月28日

       松川事件無罪確定60周年記念事業実行委員会

                   実行委員長  今野順夫